幹細胞(Stem Cell)を自分の細胞組織から培養してからだに戻す療法を「幹細胞治療」と言います。これはいわゆる再生医療法(注1)の手続を踏めば、クリニックでも実施可能なものとなっています。幹細胞治療の多くは、比較的入手可能な間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cell, MSC)を利用しており、間葉系幹細胞をその組織採取元に合わせて脂肪細胞由来、歯髄細胞由来、臍帯細胞由来、骨髄細胞由来などと言われています。再生医療という言葉は最近よく使われますが、再生医療法的な定義としては、「再生医療とは細胞を用いた治療法」と覚えておいてください。
体内に存在する幹細胞数は、加齢にともなって著しく減少するということが分かってきていますので、幹細胞治療は海外の中高年世代を中心に関心が高まっています。増やした幹細胞を体内に戻すことで、新たな細胞をどんどん作ってくれるということが期待されるのですが、培養コストが高いので幹細胞治療費用も大変な高額となっています。
そんな中で、幹細胞が培養中に多様な成長因子等のサイトカイン(cytokine、タンパク質)を分泌しているということが注目され、この培養上清液を臨床に利用するドクターが現れ出来たのが、幹細胞培養上清療法です。主に美容皮膚科で皮膚注入用に使用されてきたのですが、一部で幹細胞治療の代替として点滴療法などで使用される例もみられるようになりました。幹細胞をフィルターで取り除いたセルフリーの療法ですので、この幹細胞培養上清療法は、再生医療法上の再生医療には該当しません。
一方幹細胞研究が進むにつれて、幹細胞は培養中に多様な細胞外小胞体も分泌しており、中でもエクソソーム(exosome)と言われる脂質で覆われた微粒子(直径50~150ナノメーター)の中には、前述の多様な成長因子のみならずmRNA(メッセンジャーRNA)やmiRNA(マイクロRNA)などの遺伝子情報も含まれていることが解析され、大変注目されるようになってきました。
既に幹細胞培養上清は美容医療で知名度が上昇していましたが、上記のような背景から幹細胞培養上清のことをエクソソームと呼ぶことがネット上などで普及してしまい、その結果エクソソーム療法などの呼称が、幹細胞培養上清療法の代わりに用いられるなど、交錯している状態が続いているのが現状である思われます。
注1:再生医療等の安全性の確保等に関する法律